2015年 1月 の投稿一覧

睡眠時無呼吸症候群の治療その3「薬物療法」

女性に睡眠時無呼吸症候群の人が少ないのは、女性ホルモンが関与しでいるからではないかとみられています。女性の黄体期や妊娠期にはプロゲステロンというホルモンが増加し、肺の換気量が増大します。また、慢性の閉塞性肺疾患の人にプロゲステロン製剤を投与すると、呼吸が刺激されることもわかっています。

そこで睡眠時無呼吸症候群の人にプロゲステロン製剤を投与したところ、呼吸の改善に効果があつたという報告があります。このように睡眠時無呼吸症候群の比較的軽い症例については、薬物療法もある程度は有効とされていますが、率直にいって重度の人にも効く治療薬というものはまだなく、現在も研究が重ねられているところです。

かなりのスピードで睡眠時無呼吸症候群の解明が行われてきているものの、比較的新しい病気ゆえ、まだまだ解明しなけばならない問題もたくさんあるというのが実情です。薬物療法で用いられる薬は大きく分けると、呼吸刺激剤、向精神薬、そして上気道を継続して広げるはたらきをする薬などがあります。少し専門的になりますが、それぞれの種類の薬について、詳しく述べてみましよう。

呼吸刺激剤

さきほどのプロゲステロン製剤は呼吸刺激剤の1つで、呼吸中枢を刺激するはたらきがあります。したがって「中枢型」無呼吸や肺胞低換気などに効果があります。

ほかにアセタゾラマイドという刺激剤も「中枢型」無呼吸に対して効果があり、夜間の無呼吸の回数や中途覚醒が減って自覚症状も改善したという欧米での報告があります。
日本でもアセタゾラマイドの効果を検討するため臨床試験が行われた結果、有効率は7割弱。これはかなり有望な数字で、「中枢型」ばかりでなく、軽度の「閉塞型」無呼吸の人の薬物治療法として期待が持たれています。副作用は、手足のしびれ、頻尿、胃部の不快感などです。

ただし、アセタゾラマイドは肺に重い機能障害がある人や原発性肺胞低換気症候群の人には適応しません。一方、「閉塞型」無呼吸に対して試みられている呼吸刺激剤としては、ドパーミンを阻害するプロクロルベラジンなどがあります。プロクロルぺラジンは一部の閉塞型無呼吸の人には効き目が認められたものの、「中枢型」にはまつたく無効で、残念ながら睡眠時無呼吸症候群の治療薬としては見込みが薄いようです。

向精神薬(抑うつ剤)

群の人は、夜中に何度も目ざめることが多く、眠りが分断されるため、レム睡眠の回数をかえって増加させるという悪循環のなかにいます。

三環系抑うつ剤と呼ばれる種類の薬は、眠りのなかでこのレム睡眠が出現するのを抑えることで、等吸数を減らすものです。このほか、頤舌筋の活動を高め、舌根沈下を抑えるはたらきがあることも報告されています。三環系抑うつ剤は、重度の睡眠時無呼吸症候群の人には適応できませんが、軽症~中等度であれば有用とされています。ただ、副作用として、口が渇きやすくなったり、排尿困難、不整脈を起こす可能性も指摘されています。
睡眠中に無呼吸が起こる率がいちばん高いのがレム睡眠のときです。睡眠時無呼吸症候群の人は、夜中に何度も目ざめることが多く、眠りが分断されるため、レム睡眠の回数をかえって増加させるという悪循環のなかにいます。

上気道を広げるはたらきがある薬

鼻が詰まっていると、いびきをかきやすく、無呼吸をきたしやすくなります。また夜中に頻繁に目がさめることになります。鼻が詰まったときに最に噴霧する薬は一般にも市販されています。血行をよくすることで鼻詰まりを和らげるものですが、睡眠時無呼吸症候群の要人も、こうした薬を使用してみる価値はあるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の薬物療法として、ほかにもさまざまな薬についての研究・検討が行われています。将来、もつと有効な薬が現れるかもしれませんが、いまのところ薬物療法は軽度の人についてのみ、あるいは補助的な治療法として用いられているのが現状です。

睡眠時無呼吸症候群の治療その2「内科的治療が必要ならそちらを優先」

体のどこかに疾患があり、それがもとで睡眠時無呼吸症候群を起こしている人は、その治療を行うと無呼吸は顕著に改善されます。
しかし、そうした基礎疾患をともなわない睡眠時無呼吸症候群の人が、数の上では多数を占めます。その場合、睡眠時無呼吸自体に対しての治療を行わなければなりません。

治療の方法としては、持続陽圧呼吸装置(CPAP)の導入や夜間の酸素吸入などの内科的治療と、気管切開術や咽頭拡大術などの外科的治療に大きく分けることができます。それぞれどのような方法があるか、まずは内科的治療からみてみましょう。

効果をあげるCPAP療法

睡眠時無呼吸症候群における内科的治療で、もつとも効果がある方法として知られているのが持続陽圧呼吸装置(CPAP)を使った治療です。CPAPというのは、鼻にゴムマスクのようなものを装着し、コンプレッサーによって空気を持続的に鼻から上気道へ送り込むことで上気道の閉塞を防ぐという方法です。中~重度の睡眠時無呼吸症候群の治療方法として中心的なものになっています。
CPAPは一般に販売されているものではなく治療用具であるため、使用にあたっては医療機関で医師の診断を受ける必要があります。

下あごを前方に固定して気道を広げるスリープスプリント

スリープスプリントも高い有効性を示す治療器具の1つです。これは夜眠るときにマウスピースのようなものを口のなかに装着することで、下あごを前に引き出し、舌根の沈下を防止し、気道を確保するというものです。
口を開けて眠る習慣のある人はいびきをかきやすく、無呼吸も起こしやすくなります。
これは舌根沈下などの原因のほかに、口の中が乾燥して摩擦抵抗が増えて上気通が塞がりやすくなることも関係しているのですが、スリープスプリントを装着すると上下のあごが固定されるため、しぜんに口を閉じて鼻呼吸する習慣がつきます。また口に装着していると唾液の分泌をうながすので、口の中の乾燥を防ぐという効果もあります。

覚醒回数を減らす酸素療法

睡眠時無呼吸症候群が恐ろしいのは、低酸素血症つまり血液中の酸素不足が引き金となって体にさまざまな悪影響を及ぼすことです。
そこで酸素不足を補うために睡眠時に酸素吸入を行うというのが酸素療法の発想です。酸素療法は、CPAPと同じように鼻にマスクなどを装着し、最初は1分間に1Lから4Lくらいの酸素を鼻腔に送り込みます。治療開始直後は、一時的に無呼吸状態でいる時間が延びることもありますが、日数がたつと無呼吸の時間も締まっていきます。

手軽に試せる鼻孔拡張テープ

最近、スポーツ選手などが、絆創膏を小さくしたようなテープを鼻に貼っているのを見ことはありませんか。これは鼻孔を広げて酸素の吸入量を増やす目的で使われているものです。
テープには2本のプラスチック製のバーが内蔵されています。そしてテープを鼻腔の上あたりに貼ると、鼻に沿って曲がつたバーが戻ろうとする力によって鼻腔が持ち上げられ拡張するしくみになっています。

鼻孔拡張テープはこちら。

鼻孔拡張テープは、誰でも安全かつ気軽に使用できます。薬品類が使われていないので、妊婦や高齢の方でも大丈夫です。鼻の通りが悪くていびきをかく人などは、ぜひ試してみるといいでしょう。もともと鼻炎もちの人には効果があるでしょう。

睡眠時無呼吸症候群の治療その1「肥満ならまず痩せる」

最優先事項は「ダイエット」

いびきをかく人は肥満の人が多い、ということをこれまでくり返し述べてきました。一般的には標準体重を10%超えると肥満、20%を超えると肥満症と呼ばれますが、欧米では「閉塞型」無呼吸症候群の人の、じつに6~7割が、標準体重を20% 以上も上回る肥満症の人という調査があります。

ちなみに肥満の指標は、現在BMIで、計算されます。

BMIについてはこちら。

肥満の人の場合、のどの内側に脂肪が厚く付着して気道を狭めていることが多いので、イまず減車をレというのが治療の鉄則とされています。ですから、なんといつても肥満の原因を明らかにして、理想体重近くまで体重を落とすことが大切です。
減量方法として一般的なのが「低カロリー療法」です。これは、体が必要とする量よりも摂取カロリーを低く抑えるという方法です。
人が1日に必要とするカロリーは年齢などによっても当然違ってきますが、「低カロリー療法」では摂取カロリーを1日8001200kcalに抑えるのが通例です。

極度の肥満には「超低カロリー療法」も必要

また極度の肥満の人の場合、糖質や脂質を可能な限り制限し、摂取カロリーを1日300~800kcalに抑えるという「超低カロリー療法」もあります。
大変過激な方法ですが、高タンパクな食事をとることと、3ヶ月以内の短期間で行うこと、そして体重が理想体重より40% 以上上回つているという条件を満たす人なら、このような療法もあります。
しかしこのような方法は、医師のもとで指導されていることは絶対条件であり、素人が勝手に行うことはできません。この「超低カロリー療法」で口に入れるもののメニューには、ビタミンなどの微量栄養素が適切にバランスされていなければならないからです。「超低カロリー療法」は、短期間でかなり確実に体重を落とせる方法なのですが、注意しなければならないのは、せっかく減量に成功して、睡眠時無呼吸症候群の症状が改善しても、その体重を維持することがかなり難しいことです。

ある調査によれば1年で3分の2の人が再びもとに戻ってしまい、体重を維持できたのはわずか3%だったといいます。したがつて医師などから長期的に指導を受けることが必要です。

手術による減量法も

さまざまな減量を試してはみたものの、すべて失敗に終わった人や、減量することで生命の危機から確実に回避できると診断された場合、手術によって減量化する方法もあります。
しかし、肥満の人が減量した結果、睡眠中の無呼吸や酸素飽和度の低下、不整脈が顕著に改善されたという報告は多数あります。軽度であれば、減量するだけでも睡眠時無呼吸症候群は克服できるのです。
ただ、太っている人で上気道に疾患がある場合は、減量だけではいびきや無呼吸を完全になくすことはできません。減量とともにその治療を行う必要があります。また当然ながら減量には運動も大切です。ただしなにかの病気が原因で太ってしまっている場合は、運動僚法は避けたほうがいいことはいうまでもありません。

早食いが肥満の原因になる理由

なども生活習慣の中で修正していく必要がありそうです。
特に男性ではすごいスピードで食事を食べる人がいますので注意が必要です。