まずはふだんの生活ぷりや眠っている間の状態から
睡眠時無呼吸症候群がしばしばとりあげられ、一般の人々の間でもその恐ろしさが知られるようになって以来、いびきや睡眠中の無呼吸を心配して耳鼻咽喉科外来を訪れる人が増えています。
ひとくちにいびきをかくといっても、それが治療を必要とするいびきなのかどうか、さらには病的な、放置しておくと危険ないびきなのかどうか、専門医には的確な診断をしてもらう必要があります。
病院を受診した場合は、まずふだんの生活ぶりや眠っている間の状態、さらに病歴などについて話を聞くことからはじまります。習慣的にいびきをかくか、どんなふうないびきか、呼吸が止まることはあるか、昼間に居眠りは起こすかなど、睡眠時無呼吸症候群の典型的な症状があるかどうかが問診の中心になります。
睡眠時無呼吸症候群の典型的な臨床症状を以下にまとめてあるので、該当するものがあるかどうかチェックしてみてください。
- 習慣的にいびきをかく。
- 睡眠中の呼吸停止がある。
- 昼間から眠くて仕方がない、居眠りでトラブル(車の事故など)を起こしたことがある。
- 不眠がある。
- 起床時に頭痛がしたり、口の中が乾いている。
- 睡眠中に異常に体を動かしてもがいたり、痙攣の発作がある。
- 日中、体が重く息切れや立ちくらみがしたり、まっすぐに歩けないことがある。
- 記憶力低下や集中力低下がみられる。
- 以下のような性格変化がある
疲れやすく、あまり活動的でなくなった、ものごとに無頓着になった、怒りっぽくなった、ボーッとしていることが多い、落ち着きがなく、じつとしていることができない(子供)、落ち着きがなく、じっとしていることができない、夜尿、尿失禁がある…など
また、身体的な外観的なチェックも行います。太っている人、下あごの小さい人や下あごが後退してあごのない人、短くて太い首の人などは上気道が狭くなりやすいので、それをチェックします。
持病のある人は特に注意
病歴(基礎疾患) について知ることも、睡眠時無呼吸症候群の診断をするうえで大変重要です。たとえば次のような疾患があると、睡眠時無呼吸を起こしている可能性が高まります。
上気道の疾患
- 鼻中隔湾曲症
- 鼻ポリープ
- 鼻アレルギー
- アデノイド
- 口蓋扁桃肥大
とくに小児の大部分は、アデノイドや口蓋扁桃肥大が睡眠時無呼吸の原因になっていることが多いものです。
肺の疾患
睡眠中には上気通が狭くなりやすく、また呼吸機能も低下することは前にお話しましたが、肺に疾患があると、睡眠中に呼吸・循環器の異常がよりひどくなり、血液中の酸素不足(低酸素血症)を起こしやすくなります。
循環器に疾患がある場合
睡眠時無呼吸症候群の人には高血圧や不整脈の人が多く、逆に高血圧や不整脈の人にも睡眠時無呼吸症候群の人が多いことがわかっています。したがって高血圧、不整脈、心不全などの疾患がある人は、睡眠時無呼吸症候群がその疾患の原因に関係している可能性を念頭におく必要があるのです
内分泌に異常がある場合
舌肥大や上気道の粘膜組織が肥大する末端肥大症の人は、上気道閉塞を起こしやすくなります。また甲状腺機能が低下(甲状腺ホルモンの不足によっておこる病気) している人も舌肥大などを起こしやすくなります。
神経筋疾患がある場合
ポリオ(ポリオウィルスの感染によって起こる病気。脊髄神経をおかすために、足や腕がまひしたり、重症の場合は、胸の筋肉や横隔膜までまひが起こり、呼吸中枢である延髄がおかされると死に至ることもある) やシャイドレージャー症候群(小脳や脳幹などに変性をきたし、起立時に失神したり、排尿障害や発汗低下などの症状を持つ自律神経障害)、筋ジストロフィー、脳梗塞などの神経筋疾患が原因となり中枢型無呼吸をもたらすケースがあります。
ほかにもアルコールをよく飲むかどうか、睡眠薬や精神安定剤を常用しているかどうかも質問の対象になります。これらは呼吸中枢機能を抑制し、睡眠中の無呼吸発作を誘発することがあるからです。ここにあげたケースのうち、上気道に疾患があっていびきや睡眠時無呼吸症候群をもたたいしやらしている場合は耳鼻咽喉科で対応できますが、高血圧、肥満、代謝異常、精神障害など、他の疾患が原因に関与している場合、その治療が先決になります。ですから、そうした疾患の疑いがある人は、まず内科で健康診断を受け、異常がなければ耳鼻咽頭科で診断を受けることを最優先にします。
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