いびきを軽視してはいけない

いびき 心臓に悪い理由

いびき 心臓

いびき 心臓に悪い理由を紹介します。いびきが心臓によくないことはあまり知られていません。いびきをかくのは、熟睡している証拠」そう思っていませんか?

いびき 心臓に悪い理由

しかし、大きないびきは単なる騒音ではなく、あなたの心臓に大きな負担をかけ、深刻な健康リスクを引き起こす可能性があります。特に、いびきが途中で止まる「睡眠時無呼吸症候群」を伴う場合は、その危険性はさらに高まります。

いびきが心臓に悪い理由:見過ごされがちな危険性

いびきは、睡眠中に気道が狭くなることで起こる呼吸音ですが、単なる「うるさい音」として片付けられない、深刻な健康リスクをはらんでいます。特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を伴ういびきは、心臓をはじめとする全身の臓器に大きな負担をかけ、様々な病気の原因となることが明らかになっています。

いびきが心臓に悪いとされる主な理由は以下の通りです。

1. 慢性的な酸素不足(低酸素状態)

これが、いびき、特に睡眠時無呼吸症候群が心臓に最も悪影響を与えるメカニズムです。

  • 呼吸停止と酸素濃度の低下: 睡眠時無呼吸症候群では、気道が完全に閉塞し、呼吸が一時的に停止します(無呼吸)。これにより、血液中の酸素濃度が著しく低下します(低酸素状態)。
  • 心臓への負担: 酸素が足りない状態では、心臓は全身に酸素を供給しようと、より速く、より強く拍動しなければなりません。これは、例えるなら「息苦しい状態で常にマラソンをしている」ようなもので、心臓に非常に大きな負担をかけ続けます。
  • 血管へのダメージ: 慢性的な低酸素状態は、血管の内皮細胞にダメージを与え、動脈硬化を促進します。動脈硬化は、高血圧や狭心症、心筋梗塞などの心臓病の温床となります。

2. 血圧の急上昇と高血圧の悪化

いびき、特に無呼吸状態は、睡眠中の血圧を急激に上昇させます。

  • 交感神経の活性化: 呼吸が止まり、体が酸素不足に陥ると、脳は「危険だ」と判断し、生命維持のために交感神経を強く活性化させます。交感神経は、心拍数を上げ、血管を収縮させる働きがあるため、血圧が急上昇します。
  • 睡眠中の血圧スパイク: 健康な人では睡眠中に血圧が下がるのが正常ですが、睡眠時無呼吸症候群の患者さんでは、無呼吸のたびに血圧が急激に上昇する「血圧スパイク」が繰り返し起こります。
  • 高血圧の悪化・発症: この繰り返し起こる血圧上昇が、慢性的な高血圧を引き起こしたり、すでに高血圧の人の病状を悪化させたりします。高血圧は、心臓肥大(心臓の筋肉が厚くなる)や心不全のリスクを高める主要な要因です。

3. 不整脈の誘発・悪化

いびきや無呼吸は、不整脈のリスクを高めることが知られています。

  • 心房細動のリスク上昇: 睡眠時無呼吸症候群は、心臓の上部にある心房が不規則に震える「心房細動」の発症リスクを大幅に高めることが多くの研究で示されています。心房細動は、脳梗塞の最も一般的な原因の一つです。
  • 徐脈(脈が遅くなる): 無呼吸中に、自律神経のバランスが崩れて脈が極端に遅くなることがあります。
  • その他の不整脈: 期外収縮など、他の様々な種類の不整脈も誘発される可能性があります。

4. 睡眠の質の低下と心臓への間接的影響

いびきは、睡眠の質を著しく低下させ、間接的に心臓に悪影響を及ぼします。

  • 睡眠分断: 無呼吸や大きないびきによって、睡眠が何度も中断され、深い睡眠がとれません。これにより、日中の眠気、集中力低下、倦怠感などが生じます。
  • 慢性的な疲労とストレス: 質の悪い睡眠は、慢性的な疲労とストレスにつながります。ストレスは高血圧や動脈硬化を悪化させ、心臓にさらなる負担をかける悪循環を生み出します。
  • 生活習慣病のリスク上昇: 睡眠の質の低下は、肥満、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病のリスクを高めます。これらの病気は、単独でも心臓病のリスクを高めますが、複合的に作用することでさらに危険度が増します。

5. 心臓肥大や心不全への進行

上記のような複合的な要因が積み重なることで、最終的に心臓の構造的変化や機能低下に繋がります。

  • 心臓肥大(心筋リモデリング): 慢性的な心臓への負担(高血圧、低酸素)により、心臓の筋肉(特に左心室)が厚くなり、ポンプ機能が低下します。
  • 心不全: 心臓のポンプ機能が十分に働かなくなり、全身に十分な血液を送れなくなる状態です。睡眠時無呼吸症候群は、心不全の発症や悪化の重要なリスク因子の一つとされています。

いびきは単なる「音」ではない、健康のサイン

大きないびきや、特に睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された場合は、単なる「いびき」と軽視せず、睡眠時無呼吸症候群の可能性を疑い、早期に医療機関(耳鼻咽喉科、呼吸器内科、睡眠専門クリニックなど)を受診することが非常に重要です。

早期に診断・治療を開始することで、心臓への負担を軽減し、将来の重篤な心臓病や脳卒中などのリスクを大幅に減らすことができます。家族にいびきを指摘されたり、日中の強い眠気や倦怠感を感じたりする場合は、専門医に相談することを強くお勧めします。

心臓病の基礎知識

いびきの音を分析・調査 睡眠時無呼吸の有無や狭窄部位を探る

自分のいびきを録音して診察してもらうといい

覚醒時の患者さんを診察して、著しい異常所見が認められれば睡眠時の無呼吸の有無を推測することもできますが、軽い狭窄だったり、診察では狭窄が見つからない場合、患者さんのいびきの音が、狭窄部位を診断したり手術を行うかどうかを決定する手がかりになることがあります。
たとえば、軟口蓋などが振動して起こるいびきは音が高く、舌根沈下や口蓋扁桃肥大などが原因で狭窄をきたして起こるいびきは音が低いという特徴があり、いびきの音を分析することで睡眠時無呼吸の有無や狭窄部位を探るわけです。ですから、いびきの悩みや無呼吸の問題で訪れた人には、自分のいびきを録音したテープを持ってきていただくことも診断の役に立ちます。

PCを使ってさらに詳細に

もっと本格的に、コンピュータを使って詳しく音響分析する方法もあります。かつては大がかりなシステムを用いて行っていましたが、最近ではパソコンを使って簡便に音響分析を行うことができます。

この場合、睡眠薬を服用してもらい、睡眠時のいびきを録音して、基本となる周波数や、その変動の様子、いびきの長さや間隔、音の強弱などを調べます。音源となる頻度がもつとも高い軟口蓋の基本周波数は20~200ヘルツ、声帯がいびきの音源になっている場合は210~300ヘルツ、喉頭蓋が音源となる振動型いびきでは45~90ヘルツと低い周波数を示すことが多いといわれています。ちなみにコントラバスのもつとも低い音が40ヘルツですから、いびきの音のなかにはずいぶんと低い音のものがあることがわかります。いびきを録音することはご家庭でも簡単にできますから、ぜひやってみて自分がどんないびきをかいているか聞いてみてください。
いびきを録音する際は、マイクやラジカセを枕元から30~40cmほど離しておきます。録音レベルは中くらいがいいでしょう。いびきを大きくとろうとして、あまり録音レベルを上げすぎると、まわりの雑音も大きく録音されてしまうため、いびきの音が明瞭に聞こえなくなります。
いびき音の分類も参考になる診断材料です。

いびきは病気?

日本人の場合、いびきを習慣的にかいている人は男性で21% 、女性で6% を占めるというデータがあります。つまり、男性は5人に1人の割合で毎日いびきをかいていることになります。
はたしてそのいびきは、心配のないいびきでしょうか、それとも治療を必要とするいびきなのでしょうか。たとえ睡眠時無呼吸症候群などの問題を抱えていなくても、いびきは「騒音問題」をはらんでいることは周知のとおりです。
そして周囲が迷惑し、それを本人が気にかけていて、社会生活を営む上で何らかの支障をきたしているならば、いびきは治療の対象となります。「たかがいびき」と思われてとりあってくれないのでは?などと考えず、まずは専門医に相談してみてください。

これまでは、「単なるいびき」の治療に関しては、学会などでもあまり取り上げられなかつたのは事実です。しかし専門医はいま、こうした「単なるいびき」もまた、ある意味では病気としてとらえるようになってきています。

それは次のような理由からです。

いびきをかくということ自体が、すやすやと寝息を立てて眠っている人に比べると、程度の差こそあれ、上気道が狭窄していることを意味します。
ということは、いますぐに体に悪影響はなくても、将来的に健康の障害となる可能性は否定できないのです。

こんな調査があります。40歳から69歳までの男女を対象にいびきについて調査したところ、毎日いびきをかく人は、まったくいびきをかかない人に比べて高血圧の頻度は男性で1.9倍、女性で3.2倍多くなるというのです。
また、狭心症は男性で2.2倍も多くなっています。あなたのいびきは大丈夫ですか?